履歴書の「趣味・特技」はなぜ必要なのか
初めての就職や転職の際に必ず書くことになる履歴書には、あなたの基本情報や学歴・職歴など、あなたについて知ることができる情報がたくさん盛り込まれています。応募者としては「少しでも採用に近づけるように書きたい」と願うものです。しかし、あなたの基本情報や学歴・職歴というのは、書くことは決まっており、創意工夫をして自分をアピールするということが限られています。
採用担当者の気持ちになって考えてみると、学歴や職歴というのは動かせない事実が書かれているのであって、言うなればあなたの「過去」です。もちろん過去も大事ですし、その過去からあなたという人を知ってもらうこともある程度は可能です。
しかし、採用をするかどうかというのは「今後の期待ができるか」「自社に貢献してくれる可能性があるか」というところで判断されています。つまり履歴書は「過去」と「未来」が見えるものでなくてはなりません。面接までこぎ着けることができれば「志望動機」「自己PR」などであなたがもたらす「未来」を見せることができますが、書類選考の時点では履歴書が全てです。
当然ですが履歴書は喋りません。あなたの意思を乗せて届けられる紙です。でも、書き方によっては「履歴書に喋らせる」ということができます。漫然と書いて100%受け身の履歴書にするのではなく、能動的な喋る履歴書にできるかどうかは「趣味・特技」の欄にかかっています。
「おもしろそうな人だな」「会ってみたいな」と感じてもらうためには「趣味・特技」の欄を充実させて、あなたという人に興味を持ってもらう必要があります。「趣味・特技」の欄はあなたの経歴だけではなく、あなたという人をアピールする大切な項目です。
「趣味・特技」には何を書けば良いのか
誰もが「好きなこと」「自分の中では得意だと思っていること」はあるのですが、「趣味はなんですか?」「特技はなんですか?」と聞かれるとなかなかスムーズに答えることができません。これは「趣味」「特技」という言葉にプレッシャーを感じるからです。「趣味とは、熱中してできることで、そのことのために時間やお金を費やして、そのことを生き生きと楽しむもの」「特技とは、誰もが認める技術や能力で他の人にはできないこと」など固定観念に縛られてしまっている人は多いものです。
趣味や特技というのは、誰かに認められて「趣味」「特技」になるのではありません。「自分はこれが好き」「これなら他の人よりちょっと上手にできるかもしれない」ということで十分ですし、それこそが「趣味・特技」です。それよりも、どんなことを趣味としているのか、どんなことを特技と感じているのか、ということ自体が大事であって、その能力を見ているのではありません。
「趣味」も「特技」も思い浮かばないという人は、「自分が好きだと思うこと」「自分ができること」を紙に書き出してみましょう。「音楽を聴くことが好き」「食べることが好き」、「掃除ができる」「スポーツができる」「人と話すことができる」なんでも良いのです。きっとたくさんあります。
「趣味・特技」はどう書けば良いのか
履歴書に「趣味」「特技」を書く時に大事なことは「読書」「音楽鑑賞」などで終わらせないことです。「そのことが好き、できる」ということについて語りましょう。
採用担当者の立場になってみて「読書」とだけ書いて有る履歴書と「趣味は読書です。特にミステリ小説を読みながら伏線を探したり、犯人の目星を付けながら読むことで小説の中にいるような臨場感を味わうことが好きです」と書かれている履歴書では、どちらが「わかるなー」と共感できる可能性が高いですか?共感するという行為は、相手への興味の第一歩です。「この人に会ってみたい」と思ってもらうために「共感」は欠かせません。
または「趣味は音楽鑑賞です。自分の気分に合わせた曲を選んで聴くことで、楽しい気分はより楽しくできますし、悲しい気分もこれも大事な経験だったと思い返すきっかけにもなります。音楽は自分を向かいたい方向へ導いてくれる大切な存在です」なども良いでしょう。
特技であれば「特技は人と話すことです。話すことで相手の望んでいることを理解したり、相手の波長に合わせてお互いが楽しい時間を過ごせるように会話をコントロールすることができます」などでも良いでしょう。または「特技は国際交流です。言葉はまだ勉強中ですが、外国の方と片言の英語やジェスチャーを交えて意思の疎通を図ることができます」など、発展途上であることでも特技として書くことができます。
「趣味・特技」に相応しくないもの
「好き」「できる」だけでも「趣味・特技」にすることができるとお伝えしましたが、その中でも履歴書の「趣味・特技」の欄には相応しくないものがあります。
主には「ギャンブル」「SNS」など「偏見を持たれている可能性が高いもの」です。世の中にはたくさんの「偏見」があります。意見は人それぞれです。採用担当者とあなたが会って話すのであれば、ある程度の誤解をされても対応することができますが、採用担当者が履歴書を見ているだけの段階ではそれができません。そのため誤解を招く可能性があるものは避けておきましょう。
企業の採用担当者の年代によっては受け入れられるものやそうでないものが変わってきますので、どの年代の人が見てもすんなりと受け入れられるものを選んだ方が安全です。ギャンブルは決して悪いものではありませんし国から認められた遊びですが、どうしてもイメージが先行してしまいがちです。またSNSについては、さまざまな人と交流ができて視野が広がるというメリットもありますが、昨今のSNS関連の事件やニュースのイメージが強いことも考慮しなくてはなりません。
イメージの良くないものにも、実はすばらしいメリットがあるものはたくさんあります。自分の趣味や特技を偽る必要はありませんが、相手が納得しやすいものを選ぶということも採用担当者への心配りのひとつだと考えてみてください。